2012/05/01 知っているだけではダメ、貫いてこそ意味がある

京セラKDDI設立。新時代経営リーダー稲盛和夫の経営哲学生き方に学ぶ/外食業界に生きる人間として「知っているだけではダメ、貫いてこそ意味がある」

人間はもともと弱い存在であり、よほど意識して自分を戒めていないと、つい欲望や誘惑に負けてしまう。これもまた事実です。以前こんなことがありました。京セラがある程度大きくなり役員が仕事で外出する際に社用車が使えない。役員が遅くまで仕事をするだろうと考えた総務の担当者が、その日忙しくて車を必要としていたある営業部長にその車を回していたのです。それを知った役員は、営業部長ごときが会社の車を使うとは何事かとすごい剣幕で怒り出し、そのいきさつが私の耳にも入ってきました。そこで私はその役員を呼んでこういいました。「役員で偉いから車が使えるわけではない」。重要な仕事に携わっている人間には移動手段をどうしようかなどと雑事に気を使わず仕事に集中してもらうために社用車を用意してあるのだ。よく考えてくれ。定時で帰る役員に、忙しく走り回っている部長を怒鳴資格があるのか。

役員に優先権があったとしても、それはあくまでも会社の車であって「自分の車」ではない。それが原則であり道理です。しかし組織の中にあって、高い地位に上がりつめると、その当たり前のことがなかなか見えなくなってくるのです。

それだけに原理原則は、それを強い意志で貫かなくては意味がないのです。つまり原理原則というものは正しさや強さの源泉である一方、絶えず戒めていないと、つい忘れがちなもろいものであります。だからこそ、いつも反

省する心を忘れず、自分の行いを自省自戒すること。またそのことさえも生きる原理原則に組み入れていくことが大切なのです。

いつの間にか急成長を遂げて店も増加し、世間から見られるようになってくると、つい起業したころの苦労やそれを支えてきた社員達のことも、いろいろなことでお世話になった人々のことを忘れてしまうトップが非常に多いということだ。勿論、起業したころの苦労を常にかみしめながら原理原則を企業が大きくなろうとも部下に適切な命令や指示を出すトップも多いが、人間的な生き方の本質は、いくら自分が会社で高い地位にいようが、ミドルマネジメントで多くの部下を抱え全体をコントロールする立場であっても、その本質は何も変わるものであってはならないということを忘れてはならない。人は欲望や誘惑に負ける弱いものであるように、立場の違いこそあれども常に自分自身を戒め人と接する際の原理原則を見失ってはいけない。

特に外食業界の仕事は、現場のスタッフの労働力に依存していることが多く、いわば労働集約的ビジネスのそのものといっても過言ではないことだ。よく耳にする意見の多くは「現場はこんな苦労をしているのに、本部は何も現場の意見を聞いてくれない」という悩みや苦痛、愚痴が溢れかえっているのが現実を見て見ぬふりをしている企業も殊の外少なくないだろう。外食企業に関わらず人を大切にしない会社は成長しないという原理原則がある。立場が変わるとこれまでの理想論もいつの間にか変貌してしまう人いる。

つまり何事も知っているだけではダメであり、自分が苦労してきたような思いを部下や現場にさせないようにという志を貫かなければすべての改革や改善には繋がらないことを肝に銘じておくことだ。

本部も現場も日々仕事に追われてついつい仕事に向き合う原理原則を見失ってしまうこともしばしばであろう。人間だから致し方ないという人もいるだろうが、人間としての本質を見失ってはならない。仕事の内容は人それぞれ様々であろうとも、プロとしての姿勢は、仕事への高い意識とモラルを維持しなければよい仕事を全うすることはできないことを忘れてはならない。


メールマガジン 発行者 AFD CONSULTANTS 竹谷稔宏