2013/12/01 心を磨くために必要な「六つの精進」

京セラKDDI設立。新時代経営リーダー稲盛和夫の経営哲学生き 方に学ぶ/外食業 界に生きる人間として 心を磨くために必要な「六つの精進」

心を磨き高めることが問われているのはリーダーだけではありま せん。心をよい方向に高めて能力のみならず、人格ある人間をえ らい人間であるだけでなく正しい人間をめざすべきであるのは、 どんな人でも変わりありません。

それは生きる目的、人生の意義そのものであるといってもいい。私たちの人生とは、私たちの人 間性を高めるためのプロセスにほかならないからです。

それは、けっして悟りの境地、いわば至高の善的境地に達するな どという。難しい話ではなく、生まれたときよりも少しでも美し い心になって死んでいくことではないかと思います。生まれたと きよりも少しでも美しい心になって死んでいくことではないかと 思います。

生まれたときよりは死ぬときの魂のほうが少しは進歩した、少し は心が磨かれたという状態。それは、身勝手で感情的な自我が迎 えられ、心に安らぎを覚え、やさしい思いやりの心がしだいに芽 生え、わずかなりとも利他の心が生まれるというような状態です。 またそのような美しい心へと、もって生まれた自分の心を変化さ せていくことこそが、われわれが生きる目的です。

なるほど人生は、宇宙のとてつもなく長い歴史からすれば、わず かな一閃(いっせん/ひらめきのこと)にすぎないものかもしれない。

しかしだからこそ、その一瞬に満たない生の始まりよりは終わり の価値を高めることに、われわれの生の意義も目的もある。

もっと言えば、そうであろうと努める過程そのものに人間の尊さがあ り、生の本質があるのだと思います。

さまざまに苦を味わい、悲しみ、悩み、もがきながら、生きる喜 び、楽しみも知り、幸福を手に入れる。そのようなもろもろの様 相を繰り返しながら、一度しかない現世の生を懸命に生きていく。 その体験、その過程を磨き砂としておのれの心を磨き上げ、人生 を生き始めたころの魂よりも、その幕を閉じようとするときの魂 のありようをわずかなりとも高める。それができれば、それだけ でわれわれの人生は十分に生きた価値があるというものです。

ではどうしたら、心を磨き、魂を高めることができるのか。そ れにはさまざまな方法やアプローチがあります。山頂をめざす ルートは360度、ほぼ無限にあるといってもいいでしょう。

この心を磨く指針として、私は自らの経験から次のような「六 つの精進」が大切ではないかと思い、まわりの人たちに説いて きました。

1)だれにも負けない努力をする

人よりも多く研鑽する。また、それをひたすら継続すること。 不平不満をいうひまがあったら、一センチでも前へ進み、向上 するように努める。

2)謙虚にして驕らず

「検挙は益を受く」(謙虚なものは利益を生む)という中国古典 の一節のとおり、謙虚な心が幸福を呼び、魂を浄化させること にもつながっていく。

3)反省ある日々を送る

日々の自分の行動や心のありようを点検して、自分のことだけ をかんがえていないか、卑怯な振る舞いはないかなど、自省自 戒して、改めるよう努める。

4)生きていることに感謝する。

生きているだけで幸せだと考えて、どんな小さいことにも感謝 する心を育てる。

5)善行、利他行を積む

「積善の家に余慶あり」。善を行い、他を利する、思いやりある 言動を心がける。そのような善行を積んだ人にはよい報いがある。

6)感性的な悩みをしない

いつまでも不平をいったり、してもしかたのない心配にとらわ れたり、くよくよと悩んでいてはいけない。そのためにも、後 悔をしないようなくらい、全身全霊を傾けて取り組むことが大 切である。

これらを私は、「六つの精進」としてつねに自分にいい聞かせ、 実践するように心がけています。文字にしてしまえば平凡すぎ るほどの、このような当たり前の心がけを、日々の暮らしに溶 かしこむように、少しずつでいいから堅実に実践していくこと。 大仰な教訓を額縁に入れて飾るばかりでなく、やはりふだんの 生活のうちに実行していくことが肝要なのです。

外食業の業界でも立場の役割は異なったとしても、基本的な姿 勢は六つの精進の精神を理解し、日々仕事に取組む必要がある ことだろう。特に現場を管理する立場は、労働集約的であり、 現実的な問題として疲労困憊の日々は永遠に続くことが常であ ることだ。本部に対して、上司に対して不平不満や愚痴は現場 に溢れかえっていることが、いずれの外食企業の見えざる現実 であることは周知に通りであろう。

しかし経営側、中間管理職に就くものが、現場の不平不満をそ のままにしておけば、その店の売上や職場のスキルは低いもの にとどまってしまうだろうし、悩んでいる部下のよき上司・ア ドバイサーにはなれないことだ。

よく企業が大きくなれば、なるほど現場と本部の距離や人間会 計がギスギスするという現実に陥ることはしばしばである。そ の理由は、企業が成長ごとに本部や現場の人数は増加するがた だ単に組織体制を整えてもその内容が烏合の衆の集まりであれ ば、組織としてのうまく機能を果たさないことになることを理 解しなければならない。

つまり大切なことは、いかなる立場にあろうとも、自らの生き る姿勢という視点ですべての物事を見るべきであろうし、仕事 に対する心構えとして自らの心を磨く努力をすることであろう。 仕事をしていれば、人間の感情として気分の良い時もあれば悩 みが多い時もあるだろう。しかしそれは、人間として感情や起 伏があることは当然のことであっても、いざ仕事、現場につい た場合には、毅然とした姿勢や態度で一生懸命取り組むという 姿勢を持って何事にも接していかなければならない。

「本部のあの人は嫌味な人であるとか」、「あのスーパーバイザ ーは自分勝手だ」「本部は現場のことを何もわかっていない」な ど愚痴や不平不満は、外食業界の場合には、特に目立つ言動であ り、いわゆる本部としての社員教育の整備がしっかりとしていな いことが大きな要因のひとつであることだ。

この「六つの精進」姿勢とは決して宗教でもなければ、美談でも ないことをまず理解し、むしろ人間としての生き方、考え方など どのように生きるべきかを自問自答することこそ、新しい自分に 出会える機会かもしれない。


メールマガジン 発行者 AFD CONSULTANTS 竹谷稔宏