2014年05月01日 「ありがとう」といえる準備をしておく

京セラKDDI設立。新時代経営リーダー稲盛和夫の経営哲学生き方に学ぶ/外食業界に生きる人間として(竹谷稔宏)

どんなときも「ありがとう」といえる準備をしておく

なんまん、なんまん、ありがとう。子供にもやさしく覚えやすい祈りの言葉。それは私の信仰心の原型となった言葉であり、また私の中に感謝する心を培うきっかけともなった言葉でした。いつもこの言葉をつぶやくことで、だれに対しても、何についても、いいときはもちもん、悪いときもありがとうという感謝する心を涵養し、できるだけ正しく生きようとしたつもりです。

福はあざなえる縄のことし、よいことと悪いことが織りなされていくのが人生というものです。だからよいにつけ悪いにつけ、照る日も曇る日も変わらず感謝の念をもって生きること、福がもたらされたときだけではなく、災いに遭遇したときもまた、ありがとうと感謝する。

そもそもいま自分が生きている、生かされている。そのことに対して感謝の心を抱くこと。その実銭が私たちの心を高め、運命を明るく開いていく第一歩となるのだと、私は心にいい聞かせてきました。しかし言うが易く行うは難し、晴れの日にも雨の日にも、変わらず感謝の念を忘れないということは人間にとって至難の業です。たとえば、災難にあう。これも修行だと感謝しなさいといっても、なかなかそんな気にはなれません。むしろなんでも自分だけがこんな目に合うのかと、恨みつらみの思いを抱くのが人間の性というものでしょう。

それなら、物事がうまくいったとき、幸運に恵まれたときには、ほうっておいても感謝の念が生まれてくるのかといえば、これもそうではありません。よかったらよかったで、それを当たり前だと思う。それどころか「もっともっと」と欲張るのが人間というものなのです。つい感謝の心を忘れ、それによって自ら幸せから逃げてしまう。したがって、必要なのは「何があっても感謝の念をもつ」のだと理性にインプットしてしまうことです。

感謝の気持ちがわき上がってこなくても、とにかく感謝の思いを自分に課す、つまり「ありがとう」といえる心を、いつもスタンバイさせておくことが大切なのです。

困難があれば、成長させてくれる機会を与えてくれてありがとうと感謝し、幸運に恵まれたなら、なおさらありがたい、もったいないと感謝する。少なくともそう思えるような感謝の受け皿を、いつも意識的に自分の心に用意しておくのです。さらに次のように考えてもいいでしょう。なるほど感謝は満足から生まれるものであって不足や不満からは生まれては来ません。

しかしその満足や不足とはいったいどういうことでしょう。単純に多くを得れば満足で、少なければ不足といえるのでしょうか。外食業界に生きる人間であるにかかわらず、仕事に生きる、生活するという日々の仕事、部下との関係、たまたま時を同じくした人間関係においてもすべてに共通する言葉は「ありがとう」という言葉がすぐに発せられる人と、何も言わない人では、残念ながら後者の人の方が多いことが常であることだ。

決して宗教でもなければ、人間として生きていくための姿勢、感謝する心を持つことが大切であることを理解し仕事に取組みという気持ちを忘れないことである。

特に外食業界は、現場と本部の役割が大きく異なってくるものであり、ともかく人を介して物事が進むことが多く、人に業務を依頼することや部下に指示を出すこと、また叱咤激励することなど業務のケースによっても様々なケースに出会うことになる。その際に部下や現場の人に対しても常に「ありがとう」という感謝の気持ちを持ち合わせておくことが重要であることだ。いかなる立場にあるトップマネジメントにおいても感謝の心としての言葉は必要不可欠であろう。むしろ人間ができている人ほど心静かに何事にも適格且つ感謝の気持ちを持って業務の指示をするものである。

特に部下に接することが多いミドルマネジメントにある立場の人は、常に心を正常心と大きな心で部下に接することが求められることであろう。ただ単に業務を部下に指示をすることも相手がどれだけ指示内容を理解しているかによってもその成果には大きな差異が生じてくることだ。

つまりミドルマネジメント、トップマネジメントの立場にある人の人格に必要なことは、(決して宗教心ではないものの)感謝の心とありがとうという気持ちで物事あるいは部下に接することを忘れてはならない。むしろその感謝心があればこそ、部下に指示した業務の成功が上司の指示であったとしても、部下の功績を素直にみとめること部下がいてこそ達成できた業務であり、その業務に対する評価としては、頑張ったことに対する感謝心や「ありがとう」という心が大切であり、上司としての人格としても大切なことであることを忘れてはならない。人間は勝手な生き物であり、成功すれば自分の指示や業務を頑張ったことへの勝算を求めてくるが、その逆に失敗すると部下にあるいは上司に対する指導に恨みやつらみの思いを抱くのが人間の性というものである。しかし人間として正常心を持ち、常に冷静に物事を見る心を持っていれば、「ありがとう」という感謝心を持つことはさして難しいことではないはずだ。

それは人間として自分の心を磨き、その結果がよい時も悪い時も常に冷静でいることが誰からも尊敬される人間になることができることを理解しておくことだろう。