2013年10月01日 「現場で汗をかかないと何事も身につかない」

京セラKDDI設立。新時代経営リーダー稲盛和夫の経営哲学生き方に学ぶ/外食業界に生きる人間として「現場で汗をかかないと何事も身につかない」

人生では、「知識より体得を重視する」ということも大切な原理原則です。これは、いいかえれば「知っている」ことと「できる」ことはかならずしもイコールではない。知っているだけで、できるだけでできるつもりになってはいけないという戒めでもあります。

現場で何度も経験を積むうちにしだいに真髄が把握できる。知識に経験が加わって初めて、物事はできるようになるのです。それまでは単に「知っている」にすぎない。

社会情勢となり知識編重の時代となって、「知っていればできる」という思う人もふえてきたようですが、それは大きな間違えです。「できる」と「知っている」の間には、深くて大きな溝がある。それを埋めてくれるのが現場の経験なのです。

会社をつくって間もないころ、本田技研創業者の本田宗一郎氏のセミナーに参加しました。温泉旅館を借りて二泊三日で行われる参加費用は数十万というセミナーでした。本田さんはセミナーの開口一番、こう一喝したのです。みなさんは、いったいここへ何しにきたのか。

経営の勉強をしにきたらしいが、「そんなことをするひまがあるなら一刻も早く会社に帰って仕事をしなさい。温泉に入って、飲み食いしながら経営が学べるわけがないそれが証拠に、私は誰からも経営について教わったことはない。そんな男でも会社が経営できるのだから、やることは一つ、さっさと会社に戻って仕事に励みなさい」と、罵声を浴びせられました。

本田さんはつまり畳水錬のバカバカしさを私たちに教えていたのです。畳の上で泳ぎを習ったところで、泳げるようにはならない。それよりもいきなり水に飛び込んで無我夢中で手足を動かせ。現場で自ら汗をかかないかぎり経営なんてものはできやしないのだ。

本田自身が層であったように、偉大な仕事をなしうる知恵は、経験を積むことによってしか得られません。自らが体を張って取り組んだ実体験こそが、もっとも貴い財産となるということなのです。

外食業に生きる人としては、もっとも現場が大切だといわれているように、現場を知らなくして本部の仕事ができるはずがないという暗黙の常識があることだ。飲食店の現場を体得していない人が、知識だけではその業務に関わることが難しいことを言っているに等しいことであろう。

つまり現場を指導するスーパーバイザーの仕事は、現場業務を体得し且つ、経営的知識、指導力、人望、統率力など様々に監理者でなければ、その仕事を推進することはできないことを理解しておかなければならない。

特に現場指導とは、管理側の仕事ではなく、現場に関係する営業側の仕事に精通しなければ何の役にも立たないことが現実であろう。飲食店とは人の手を介してサービスが成立し、その対価として利益を得るというビジネスであるように、カタチだけの知識ではなく、現場の状況やニュアンス的微妙な感覚を体得していなければ、現場に関わる仕事がスムーズにできないことだ。

その立場が経営者、あるいは経営側の位置する人であっても、そこに求められることは、現場に精通していることであり、実体験を積み重ねている人でなければ仕事をうまく進めることができないだろう。

ある店が売上不振という問題にある。経営側はSVに対して「なんとかしろ!」という指示を出す。なぜならば、この店の経営をどのようにしていくべきかなどそのヒントも答えもすべて現場に隠されていることであり、飲食店であれば、そこに来店する客の動向や反応を見てみればその店の評価が理解できるが(問題点がわかる)、現場に行かない限りその問題点を発見することはできない。

つまり本部の対策は、担当SVに現場に何度も通って具体的に現実を分析しろという指示を発していることだ。勿論その意味は、売上低下、経営不振の理由のすべては、現場にその解答があることを経営側が体得しているからであろう。

経験とは知識と体得が平均化されたものでなければ、その力を発揮することはできない。むしろ知識に偏った指示や指導は現場の何の役にも立たないことであり、実務経営に勝るものはないのが飲食業の基礎であることを忘れてはならない。

現場で額に汗してはじめて成果を上げるヒントができるはずだ。知識編重の時代と言われているものの、飲食業では常に現場主義が原理原則であることを理解しておかなければならない。