2014年03月01日 「リーダーには才より徳が求められる」

京セラKDDI設立。新時代経営リーダー稲盛和夫の経営哲学生き方に学ぶ/外食業界に生きる人間として/竹谷稔宏「リーダーには才より徳が求められる」

私が考えた「人生の方程式」は、考え方、熱意、能力という三つの要素の乗数で表されます。不祥事を起こしたエリートたちはみな、人並すぐれた能力をもっていたはずです。熱意や使命感もあり、これまで人並以上の努力もしたにちがいありません。しかし肝心の考え方に問題があったため、せっかくの能力や熱意も正しい方向へ発揮されなかった。そのために誤った行為を犯し、社会的に害をなしたばかりか、自らの首を絞めるようなことにもなってしまったわけです。

ここでいう考え方とは、生きる姿勢、つまり哲学や思想、倫理観などのことであり、それらをすべて包含した人格のことでもあります。謙虚という徳もその一つに数えられるでしょう。その人格がゆがんでいたり、邪(よこしま)なものであれば、いくら能力や熱意に恵まれようが、いや恵まれていなければいるほど、もたらされる結果の負の値は大きくなってしまうものです。

また現代の日本社会についていえば、リーダー個人の資質というよりも、リーダーの選び方それ自体に問題があると考えられます。というのも私たちは、組織のリーダーというものを、人格よりも才覚や能力を基準に選ぶことをくり返しきたからです。人間性よりも能力、それも試験の結果でしか表せない学業を重視して、人材配置を行ってきたといってもいい。人格というあいまいなものより、才覚という、成果に直結しやすい要素を重視して、自分たちのリーダーを選ぶ傾向が強かったのです。

我が敬愛する西郷隆盛も、「徳高き者には高き位を、成功多き者には報奨を」と述べています。つまり成績にはお金で報いればいい人格の高潔な者こそ高い地位に据えよといっているのです。百年以上も前の言葉ですが少しも古びていない、今日にも十分に通用する普遍的な考え方といえます。

道徳の崩壊、モラルの低下がいわれる昨今こそ、こうした言葉の意味を肝に銘じるべきでしょう。人の上に立つ者には才覚よりも人格が問われるのです。人並みはずれた才覚の持ち主であればあるほどその才におぼれてないよう、つまり余人にはない力が誤った方向へ使われないようコントロールするものが必要になる。

それが徳であり、人格なのです。徳というと、そこに復古的な響きを感じる人もいるかもしれませんが、人格の陶冶(とうや)に古いも新しいもないはずです。同じように趣旨のことを、中国は明代の思想家、呂新語がその著書「しん吟語」の中で明確に説いています。すなわち「深沈厚重なるは、これ第一等の資質。らくらく豪雄なるはこれ第二等の資質。聡明才弁なるは、これ第三等の資質」この三つの資質はそれぞれ順に、人格、勇気、能力ともいいかえられるでしょう。つまり呂新語は、人の上に立つものはその三つの要素を兼ね備えていることが望ましいが、もしそこに序列をつけるなら、一が人格、二が勇気、三が能力であると述べているのです。

外食業に関わらず会社組織とはスタッフ同士という人の集合体であり、役割はそれぞれの立場によってかわってくるものの、まさに人と人のメンタル的関係によって機能するビジネスでもあるといっても過言ではないだろう。

むしろ仕事には同僚もいれば、上司、部下もいるだろうし(上下関係があることは組織としては当然のことであり)、人間関係をスムーズ且つ相互理解するポイントとしては、才覚、能力を優先するのではなく、その人の人柄、人徳がある否かを重視することが大切であることだ。

往々にして外食企業の組織とは、店の数が多くなければなるほど、本部組織の仕組みや組織としてあるいは統括する個人の効率性、力量を問われるものになるばかりか、いかに組織を動かす才覚、能力があるかで現場を管理、統括、活性化することもあることである。

いわば組織を牽引するリーダーの仕事への姿勢、考え方、熱意、能力で組織が活性化したり、うまく機能しない組織になってしまうことを理解しておかなければならない。

しかし現実に仕事の役割が部下に業務を指示、命令する立場にあるリーダーの資質としては、これまでのように試験の結果でその地位を確立することよりも、本来であれば仕事への考え方や熱意、さらにスタッフに慕われる人徳がなければ、うまく組織を動かすことはできないことを理解しなければならない。

仕事で失敗した部下に叱咤したとしても、そのメンタルをもっとどん底に落としてしまうようなリーダーは、人を育てることはできないだろう。むしろその失敗を理由やその解決方法を具体的に指導することで、落ち込んだメンタルリズムを回復させてあげるという姿勢が必要であることだ。

勿論リーダーには(様々なタイプがあるように)、ともかく叱咤激励の激状型、相手の意見を十分に聞く聞き上手型、有無も言わせず指示、命令を出す能力優先型、その他タイプをつければきりがないほど様々な性格がある。

つまりどのようなタイプのリーダーであれ、これからの求められるリーダーの資質やタイプとしては、部下に支持され信頼される人徳がなければ、組織を円滑に動かすことはできないことだ。

いわば人徳こそ企業人として組織を動かすために重要なリーダーの資質になることを忘れてはならない。